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どっちが速い?・2 [├クイズ]


 

Q:先にB地点上空に到達し、管制官に報告を入れたのはどちらでしょうか?

三択です。

A:高度10キロのヒコーキ 

B:高度5キロのヒコーキ 

C:同着だったので、せっかちな方のヒコーキ  

 


山などの障害物、風の影響はないものとします(全域無風状態)。

 

先週こんなへんてこクイズを出させていただきました。

今回も沢山の方にお付き合い頂きまして、どうもありがとうございました。

ちょっと考えると、対気速度計の針が同じ位置にあるのですから、同着になると思いますよね?

ところがヒコーキの対気速度計は何人かの方が書いてくださっている通り、

地表面では正確な速度計なのですが、高度が上がるごとにどんどんズレていきます。

しかもこのズレ方がハンパでなく、例えば高度10kmの場合、

速度計の針が200km/hを指していたとしても、実際には350km/hくらい出ています。

ジャンボの実用上昇限度は高度約12km(4万フィート)ですので、

目いっぱい上がればこの差はさらに開くことになります。

なぜそんなことが起きてしまうのかといいますと、対気速度計がそういうしくみになっているからです。

対気速度計は、「ピトー管」というストロー状のものを使って計ります。

しくみを極めて大雑把に言いますと(詳しくは他のサイトでご確認ください)、

ピトー管の中に入ってくる空気にどの位「押す力」があるかを計り、これを元に対気速度計の針を動かしています。

ここで重要なのは、ピトー管に入ってくる空気の速度を計っているのではなく

飽くまで「押す力」を計り、その力を「速度」として示しているという点です。

「それじゃ速度計じゃないジャン」と思われるでしょうが、

確かにコレは車やバイクの速度計とは性格がまったく異なります。

それで、空気の速度(実際の速度)を、
「真対気速度(TAS:Ture Air Speed)」

対気速度計に表示される”速度”を、
「指示対気速度(IAS:Indicated Air Speed)」と呼び、区別しています。

 

空気は上空にいくほど薄くなります。

「空気が薄くなる」とは、「空気の粒が少なくなる」ということです。

例えば、ヒコーキが同じスピード(真対気速度)を保ったまま高度を上げていったとします。

すると、ピトー管の中に飛び込んでくる空気の粒の速さは変わらないのですが、

飛び込んでくる粒の数が減ります。

すると「押す力」が弱くなってしまい、速度計の針は下がっていくのです。

空気の粒の数が減っても「押す力」を変えないためには、

粒が速く飛び込んでくれば良い、つまりヒコーキの速度を上げてやればよいことになります。

 

それで速度計の針が同じ位置にある場合、

高いところを飛んでいるヒコーキの方が実際には速く飛んでいることになります。 

ということでクイズの正解は

A:高度10キロのヒコーキ 

 でした。

 

高度が上がるごとに実際の速度からどんどん大きくズレていってしまうわけで、

一見無意味な計器のような気もしますが、ヒコーキが飛べるのは空気のおかげなので、

地面との関係よりも空気との関係の方が重要です。

見方を変えるならこの計器は、「高度がどんなに変化しても常に空気との関係を正確に示す」。とも言えます。

一例として、ヒコーキの揚力はこの「押す力」に比例しており、

例えばこの速度計で200km/hで失速するとすると、高度がどれだけ変わろうが、

この速度計で200km/h以上出ていれば大丈夫。という具合です。

 

ところでクイズのヒコーキですが、具体的にどのくらい早く到達するかといいますと、 

10キロ上空を飛んだヒコーキが5キロ上空を飛んだヒコーキよりも、

2分20秒早くB地点に到達し、管制官に連絡します。

計算方法を下に書いてみましたので、興味のある方は覗いてみてください。  

ただし、普段は使わない言葉、数字がいっぱい出てきますのでご了承くださいませ

                                             

 

高度5キロ、10キロでどのくらい時間に差が出るのか実際に計算してみます。

動圧=1/2×空気密度×速度² 

という公式を使います。

まず、基準となる地上での動圧*を求めます。

・高度0mの空気密度=0.1249
・真対気速度(TAS)*=500km/h→138.8m/sec

として、この数字を公式に当てはめますと、

動圧=1/2×0.1249×138.8² となり、

動圧=1,204.668kg/

となります。

基準となる動圧が出ましたので、この数字を公式に当てはめて、

それぞれの高度での真対気速度(TAS)を求めていけばよいわけです。


 

*動圧:「ヒコーキが動くことによって生じる空気の圧力(押す力)」
これを厳密に数字で出します。

*真対気速度(TAS:Ture Air Speed)とは、前述の「空気の実際の速度」のことで、無風状態の場合TAS=対地速度。
高度0の場合、TAS=IAS(Indicated Air Speed:速度計の指示する速度)となります。


 

□まず5キロ上空の真対気速度(TAS)を出してみます。
・動圧=1,204.668
・5キロ上空の空気密度=0.0751
として先ほどの公式に当てはめますと、

1,204.668=1/2×0.0751×V²  となり、
V=179m/sec →644.4km/h
5キロ上空の真対気速度(TAS)は、644.4km/h となります。


□次に10キロ上空の真対気速度(TAS)を出してみます。
・動圧=1,204.668
・10キロ上空の空気密度=0.0421
として同じように公式に当てはめますと(式省略)、

V=239m/sec →860.4km/h  となり、
10キロ上空の真対気速度(TAS)は、860.4km/h となります

            □  □  □  □  □  □

それぞれの高度での真対気速度(TAS)が出ましたので、
次に所要時間を求めてみます。
basashiさんに教えて頂いた、地球が球体であることを考慮に入れた
A地点からB地点までの距離を使わせて頂きます。

・  5キロ上空の真対気速度(TAS)=644.4km/h
      〃   実飛行距離=100.079km
・10キロ上空の真対気速度(TAS)=860.4km/h
      〃   実飛行距離=100.157km

として、この数字を 速さ×時間=距離 の公式に当てはめますと、
  5キロ上空の所要時間は、9分19秒 
10キロ上空の所要時間は、6分59秒  となります。

両方の所要時間を差し引きしますと、

10キロ上空を飛んだヒコーキが
5キロ上空を飛んだヒコーキよりも、
2分20秒早くB地点に到達し、管制官に連絡する。
となります。

 


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コメント 21

おろ・おろし

へぇ~、へぇ~、へぇ~、へぇ~、へぇ~、
へぇ~、へぇ~、へぇ~、へぇ~、へぇ~、
へぇ~、へぇ~、へぇ~、へぇ~、へぇ~、
へぇ~、へぇ~、へぇ~、へぇ~、へぇ~。

へぇ~が20ポイント。

以上、トリビア風でした。
by おろ・おろし (2007-07-02 20:10) 

krause

なるほど、一つ勉強になりました。
by krause (2007-07-02 20:21) 

tooshiba

ためになる記事でした。しかし私にはもったいない・・・。
要約すると、空気が薄いほうが効率よく飛べるってことでしょうか。
by tooshiba (2007-07-02 22:00) 

よっしゃ、正解でした~。
by (2007-07-02 22:25) 

コスト

対気速度計に動圧の公式全部初耳です!
これはすごいし、いいクイズです☆勉強になりました。
またダイビングで例えて申し訳ないんですが、水深が深くなると空気の減りが速くなります。周囲の水圧が体にかかってくるので、圧縮した空気を吸うことになるからです。でも別にスピードは変わらないんですが^^
nice!×2
by コスト (2007-07-02 23:20) 

ひろ茶

やった!正解でした!!w
ピトー管の仕組みって面白いですね。でも、この場合
パイロットの方ってどうやって実際の速度を知るのでしょうか?
あと、自分の好きなことのためなら数学も苦じゃなくなるのではなかろうか!
なんてとりさんの日記を見ていて感じましたよ!
by ひろ茶 (2007-07-02 23:33) 

マリオ・デ・ニ-ロ

うわぁ~い!当たった当たった♪
パイプみたいなストロ-に、ピンポン玉の様なものを載せて、息を吹き込むと空中に持ち上がるおもちゃ、覚えてますか?
玉の周りをチュ-ブで覆い目盛りをつけると簡易ピト-管の出来上がり!マイクロライトプレ-ンに付いているのを見たことがあります。
by マリオ・デ・ニ-ロ (2007-07-02 23:53) 

とり

皆様 コメント、nice! ありがとうございました。

■おろ・おろし さん
満へえ ありがとうございます。^^)/

■Krauseさん
お付き合いありがとうございました。m(_ _)m

■letterwritin.. さん
nice! ありがとうございました。

■xml_xslさん
nice! ありがとうございました。

■おすぷれい26 さん
nice! ありがとうございました。

■tooshibaさん
んー、要約というか、発展させるとそうなりますかね。
そこまで読み取るとはすごいです。

■こけもも:さん
はい。理由もバッチリでした☆
お付き合いありがとうございました。

■コストさん
>圧縮した空気を吸うことに
おお、初耳でした。過呼吸にはならないんでしょうか?
nice!×2 ありがとうございます。

■hirochaさん
>実際の速度
計器速度→誤差補正→温度補正→密度補正→風補正→対地速度
となるのだそうですよ。
ただ、今はカーナビのすごいのが普及してますので、それで十分なんじゃないでしょうか?
>好きなことのためなら
オイラがまさにそれです。(^^;

■アスランマリオさん
はい。正解です☆
>簡易ピト-管
な、なるほど~!(@Д@)
面白いです!軽いし、いいですね。
by とり (2007-07-03 06:20) 

torakki

そっかぁ~ピトー管かぁ~。
って聞いたことのあるくらいの知識しかないですけど(笑)
by torakki (2007-07-03 07:22) 

しまふくろう

やっと正解したようなきがしますm(__)m
色んな飛行機のピトー管写してアップしますかねー
by しまふくろう (2007-07-03 09:18) 

響(きょう)

とてもお詳しいのですね。
こういうのは、勉強しているもの勝ちですよね。

今日は私の気持ちを記事にしました。
読んでいただけると、すごく嬉しいです。
by 響(きょう) (2007-07-03 14:32) 

アスキ

うん、ワカラン!!
後半の方は分からなかったので飛ばしてしまいました(特に数式の方を、、、)
あと
空気の粒の量の違い=気圧の違い
なのでしょうか、だったらぼくは反対のこと考えていました。
by アスキ (2007-07-03 16:13) 

テルの風景屋

これは面白ぇです~^^
読んだ瞬間そう感じました。
&インタレスティングです。&それを知ってるとりさんにリスペクトです^^
RSS登録させてもらいました~。
今後ともよろしくです。
by テルの風景屋 (2007-07-03 22:25) 

Tripleseven

え… 今の飛行機ってあれだけ高性能なFMS積んでるのに気圧補正してくれないんですか?ねぇ… ねぇ~~!!
すみません。言い訳はココで止めておきます。
by Tripleseven (2007-07-03 23:29) 

basashi

とほほ、対気速度計が2種類あったとは...^^;
だから飛行機のコクピットって、あんなに機械だらけになってしまうんですね。
by basashi (2007-07-04 00:45) 

とり

■torakkiさん
ピトー管なんですよ~(^_^;)

■しまふくろうさん
しまふくろうさんからのクイズ、出して欲しいです~
>色んな飛行機のピトー管
是非!
静圧孔見てみたいです。まだ見たことないので。

■イッキさん
nice! ありがとうございました。

■響(きょう)さん
背伸びして書いております。(^^;

■アスキさん
パイロットになるのでしたら、今回のことは絶対避けられませんよ~
でも、五教科まんべんなく高得点ですから大丈夫!
この位の事は、そのうち鼻歌歌いながらでも余裕で理解できますよ。
>反対のこと
そっか~。惜しかったですね。
空気の粒の量の違い=気圧の違い ということで合ってると思います。

■テルの風景屋さん いらっしゃいませ~ヽ(*´ヮ`)ノ
いえいえ、ただの知ったかぶりですから~
こちらこそ宜しくお願いします^^)/

■Triplesevenさん
途中まで完璧な回答だったのに・・・。(o ̄∇ ̄o)ニヤ
読んでいて、「気圧補正するのは高度計やぁー!」と突っ込んでしまいました。
正直言うと、実はオイラもイマイチピンとこないんですが、ヒコーキの周りの空気の状態についての情報がすごく大事ということなんでしょうね。

■basashiさん
>2種類
ありゃ、またまたオイラの出題ミスかな??
参考にした本、サイトでは一応、戦闘機も旅客機も、「速度計」といえば今回のタイプで話が進められておりました。
もう1つの対気速度計、オイラは知りません。(^^;

それはともかく、実飛行距離情報ありがとうございました。
実は、最終的な時間の差が、100キロで計算すると、2分21秒でした。
basashiさんから頂いた正確な数字で、2分20秒に変わったんですよ。
どうもありがとうございました。m(_ _)m
by とり (2007-07-04 06:13) 

まさ

こんばんは^^
今回は"引っ掛け"なぞなぞと予想しての解答だったんですが、しまふくろうサンが答えた時点で敗北ケテ~イでした・・・orz

ではではセンセー質問!
その真対気速度-対気速度計=の約360km/hぶんってのは、少なからずエンジンに負荷が掛かってるってことですか?
by まさ (2007-07-04 22:03) 

とり

まささん おはようございます^^
アハハ、模範解答を織り込みつつ、
キッチリとボケてくれるところがらしいです。(^^;
>負荷
あんまし自信ないですが、ほとんど変わらないと予想します。
ヒコーキが加速も減速もせずに水平飛行している場合、抗力と同じだけの推力を出していることになりますよね。今回の「押す力」がその抗力に相当し、これが変わらない訳ですから、推力も変わらないと思います。
まささんはどう思われますでしょう?
by とり (2007-07-05 07:31) 

とり

ハイマンさん
nice! ありがとうございました。
by とり (2007-07-07 16:36) 

sak

ダメでしたねぇ...
頭がウニになりそうです(^^)
by sak (2007-07-07 18:28) 

とり

sakさん
アハハ、こんなこと、普段考えもしないですよね。
へんてこクイズにお付き合いありがとうございました。
by とり (2007-07-08 07:37) 

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