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高校生日記・07 [■旅行記]

それまで約2年間、「受験」、「受験」と煽られ続け、成績至上主義の雰囲気にすっかり呑まれ

(といってもそんなに勉強しなかったが、雰囲気だけは(゚Д゚;≡;゚Д゚)焦っていた)、

東京の生活サイクルに懸命に追いつこうと必死になっていたオイラにとって、 

ここでの生活はまさにカルチャーショックの連続だった。

まず、なんといっても流れる時間がゆっくりで、時間をセカセカ気にする人がいない。

内地の感覚で端的に言えば、ものっそいルーズ。よく言えば「おおらか」

いわゆる「沖縄タイム」だ。

 

「沖縄タイム」といえば、必ず思い出すエピソードがある。

オイラがまだ那覇に住んでいた時のこと、

親戚のおねーさん(高校生か、大学生くらい)がうちに用事で来ることになった。

詳しいことは忘れてしまったが、母と結構重要な用事があって、

「○時から話し合いをしましょう」ということだった。

約束の時間になっても、もちろん来ない。

だって 「沖縄タイム」だから。

ところが30分待っても1時間待っても来ない。

さすがに事故にでも遭ったのかと、おねーさんの家に向かって歩き出した。

中間地点まで来た辺りで、遥か向こうに人影が見えた。

こちらに向かって歩いている。

と思ったら、急にしゃがんで動かなくなった。

近づいてみると、おねーさんだった。

ずっとしゃがんだままで一体何事かと思えば、なんと、お花を摘んでいたのだった。

おねーさんはオイラに気がつくと、オイラを見上げてにっこり笑い、言った。

「あのね、今向かってるとこ」。

 

一般的に言って、本島から離れれば離れるほどこののんびりムードは更に加速する。

いや、のんびり加減が増すのだから、加速でなくて減速か??

とにかく与那国は最果ての小さな島だから、かなりのんびりだ。

こののんびり加減は恐らく全国でもトップクラスなのではないか。

この、のんびり、ゆっくり、遅れる、ということに関するとらえ方も内地との相違点だった。

ここではこうしたことが決して罪ではないのだ。

時間に遅れること、そして約束そのものを守らないことにさえ、内地の感覚でいえば罪悪感が発生していないように映る。

 

そうしたのんびりムードに驚かされたのと同時に、不便な島での生活は、

成績、学歴という尺度でしか人の価値を測れなかったオイラに、如何に自分がちっぽけな存在かを教えてくれた。 

学業の頭の良さと人間性は両立しなくても成り立ち、便利な都心では、金さえ払えばそれで事足りることが多い。

しかしここでの生活は、そんなオイラの「常識」をあっさり壊してくれた。 

 

朝はいつも8時頃兄さんとジープで牧場に行った。

ジャングルのようなところを通って行くのだが、ジープでないと絶対に登れないような急な坂、

大きな穴がたくさんあり、初めてアスファルト道路のあり難さを知った。

牧場に近づいたところでクラクションを鳴らすと、どこからともなく真っ黒な牛がのそのそと5頭現れる。

木製の柵越しに、蚊取り線香のカンで配合飼料をすくって、大きな鉄製のタライに入れてやる。

牛は5頭なのにタライは4つなので、すぐケンカが起きた。

この牛、見た目は怖いのだが、兄さんは牛の機嫌が悪い時に胸をこずかれてぶっ飛ばされたことがあり、本当に怖いのだった。

 

浜辺の近くに新しい家を作っている。

1階は郷土資料館にするのだそうだ。

この家の建築廃材も自分たちで処分しなければならぬ。

兄さんとジープに廃材を山と積み込み、島の共同ゴミ捨て場に行ったり来たり。

半日掛りでに捨てに行ったりもした。

 

日中は親戚の子供たちの宿題を手伝った。

小学生の勉強ならオイラでもなんとかなる。

確か、九九とか分数とかを手伝ったような気がする。

子供たちは人懐こくてとても可愛いのだった。

いつの間にか勉強そっちのけでじゃれて暴れ回ってしまう。

精神年齢が著しく低いので、子供と同レベルで遊べるのがオイラの特技だ。

そして、いつもオイラがオバーに注意されるのだった。ショボーン。

当時は家の前に小さな店があり、日中はオイラも応対に追われた。

ああ忙しい。

 

地元の人は店に用がある時は、まず家の方に寄って声を掛けてくれるので、店に張り付かなくて済む。

店には、酒、切手、ここで作った玩具、絵葉書、クバの葉で作った扇、蜂の巣、花火など、いろいろ置いてあった。

たまに観光客が「役場でここに店があると聞いて来たんですが」とやって来た。

観光客にはクバの葉で作った玩具をもれなくプレゼント。

オイラも観光客に毛が生えた程度だというのに、観光客の前では、

「ナンタ浜は見ましたか? とってもキレイですよ」などと、

限りなくゼロに近い与那国情報を総動員していっぱしの島民風を装っていた。 

その他、空港にも売店があり、1日4回、石垣からヒコーキが来るたびにこの家の姉さんが店番に出掛けた。

 

当時の与那国には島の中心部に信号機が1つだけあった。

どうみても信号が必要とは思えなかったが、

「子供たちが島を出て、信号機を見ても困らないように」ということなのだそうだ。

 

時々商店に買い物に出掛けた。

買い物といっても、「アイス買って来い」という兄さんのパシリとかだったが。

島の日用品の多くは船便に頼っており、台風の時は欠航が続いて島からアイスが消えた。

やっと物資が届くと、店先には「○○入荷しました」という貼り紙が出た。

 

3時から7時くらいまではいつも目の前のナンタ浜で泳いだ。

強烈な紫外線で大変なことになるので、日中泳ぐ人はまずいない。

地元の子供たちもみんな夕方からぞろぞろとやって来る。 

今はどうか知らないが、当時の与那国で視聴できるのはNHKだけだった。

だから浜辺で子供たちが「昨日の見た?」と盛り上がるのは、

NHKの健全アニメのみ。

浜では、水深1m程度の浅いところでも人にまぎれて小魚の群れが平気でうようよしていた。

2~3m潜ると、大きな魚がたくさん泳いでいるのがよく見えた。

台風の日も泳いだ。

白い大波が沖から次々と打ち寄せてきて、頑張って踏ん張っていても後ろに倒されるのだった。

海底には貝がいて、貝拾いもよくやった。

時々ミノカサゴを発見して、慌てて浮上したりしたけれど。 

 

(続く)


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コメント 27

飛騨の忍者 ぼぼ影

沖縄タイムですか、、。
どちらが良く、どちらが悪いのかはわかりません。
でも時間に追われることを忘れ
晴耕雨読の生活が理想だと思います。

by 飛騨の忍者 ぼぼ影 (2008-06-07 16:27) 

カンクリ

「沖縄タイム」は本当にノンビリしてますよねぇ~。
レンタカーで本島を回った時、ちょっと幹線道路から離れた所を走ると必ずと言って良い程前を走るノロノロ車は地元の方で・・。(^^; 一週間も滞在してればそのペースに慣れるのでしょうが、慣れるまでが・・・。

by カンクリ (2008-06-07 17:23) 

いっぷく

沖縄タイムいいですね、時間に縛られすぎている生活は
時として自分を見失ってしまいます。
でもなかなか時間をあいまいに生活もできないので難しいところです。
ある意味で沖縄タイムはあこがれです。
by いっぷく (2008-06-07 18:31) 

an-kazu

ウチの会社は東京にありますが、
日常業務は○○タイムのようです(ダメじゃん)
by an-kazu (2008-06-07 19:04) 

tooshiba

ああー、なんか時の流れが違いますね。

数分の差で内定への道が閉ざされた自分としては、ガチガチの都会時間が恨めしいこと頻りです。

島で信号が1つだけ、というのは聞いたことがあります。
そんな与那国島も、今は信号機が林立しているのでしょうか。
by tooshiba (2008-06-07 20:00) 

miffy

沖縄タイムっていいですよね~
時間にしばられないでのんびり暮らせるのって理想です。


by miffy (2008-06-07 20:29) 

ぴーすけ君

沖縄タイムいいですね~d(^o^)
by ぴーすけ君 (2008-06-07 21:49) 

pica

もっと、のんびりと言われている「ハワイアン・タイム」で
過ごしたいというナマケモノは私です。
by pica (2008-06-08 01:10) 

とり

皆様 コメント、nice! ありがとうございます。

■飛騨の忍者 ぼぼ影さん
>晴耕雨読の生活
オイラにとっても理想です。
時間の約束を守らないということに関しては、沖縄の人たちの中にも、「もっと内地の人たちを見習ってちゃんとしようよ」と主張する人たちもいます。

■さちこさん
nice! ありがとうございます。

■カンクリさん
分かります。オイラも普段はセカセカと運転してますので^^;
オジー、オバーが運転する軽トラとかですよね。

■xml_xslさん
nice! ありがとうございます。

■いっぷくさん
上でもちょっと書きましたが、沖縄では医師、弁護士の会合でさえ、時間が守られません。さすがにこれはマズイと考える人もいます。
やっぱりほどほどが1番ですね^^;

■猫屋福助(株)さん いらっしゃいませ~ヽ(*´ヮ`)ノ
nice! ありがとうございます。

■an-kazuさん
ウチも会議の終了予定時刻が守られたためしがありません(;´Д⊂)

■赤と青さん
nice! ありがとうございます。

■tooshibaさん
>数分の差
記事見ましたよ(´;ω;`)ウッ
あまりに時間にしばられるのも考えものですよね。
信号機、今では増えて、ナント2つになったみたいです^^

■miffyさん
普段は時間に追われる仕事をしているので、時々「沖縄タイム、いいなぁ(遠い目)」と思ってしまいます。

■ぴーすけ君さん
ぴーすけ君さんのブログの世界観、まさにそんな感じですよね^^

■ラナさん
nice! ありがとうございます。

■picaさん
おお、もっと上があるのですね!Σ(゚Д゚;)
見てみたいな~。

■そらまめさん
nice! ありがとうございます。
by とり (2008-06-08 06:40) 

masa

沖縄タイムなんてのがあるんですね。
約束の時間なんてあってないようなものですね。
私も結構ずぼらなほうなので、沖縄タイムに合うような
気がします。
by masa (2008-06-08 07:37) 

ひろ茶

おねーさんと言う単語だけで、なぜかここにはかけない妄想が
スタートするわけですww
沖縄タイム、僕も経験しております。飲食店の待ち時間も東京タイム基準で
考えていたら、とても沖縄を楽しめないですね。
見た目も怖けりゃ本当に怖い牛さんのくだりが( ̄ー ̄)ニヤリッポイントですね。
by ひろ茶 (2008-06-08 20:38) 

まめ助の母

沖縄タイム…前にテレビで特集してました
その時は○時で居酒屋で同窓会ってことで
全員揃うのは何時間後でしょうってクイズでしたよ(^_^;)

うちの会社はややのんびりの飯能タイムです(^_^)

ちなみに私、牛に引きずられたことあります
乳牛でもやっぱり甘く見ちゃいけません…
by まめ助の母 (2008-06-08 20:52) 

sak

沖縄タイム...与那国タイム...いいですよね(^^
by sak (2008-06-08 21:28) 

野原橋

貴重な経験されてますね~。
私なんかせかせかした関東人の典型です。
私もそのうちこういう経験をしてみたいものです。

by 野原橋 (2008-06-08 22:56) 

とり

■masaさん
そういう自覚がある方にはいいかもしれません^^

■こけもも:さん
nice! ありがとうございます。

■Krauseさん
nice! ありがとうございます。

■ccqさん
nice! ありがとうございます。

■ひろ茶さん
>飲食店の待ち時間
旅行記に書いてましたよね^^

■まめ助の母さん
アハハ、飯能タイムですか。
>引きずられ
だだだだ大丈夫ですか?(@Д@)

■sakさん
関西とは対極なのではないでしょうか^^;

■野原橋さん
確かにこれは貴重な経験ですね^^;

■kenjiiさん
nice! ありがとうございます。
by とり (2008-06-09 06:39) 

hiro78

『沖縄タイム』 いいなぁ~
by hiro78 (2008-06-09 10:50) 

とり

hiro78さん
メリハリ大事!^^
by とり (2008-06-09 20:55) 

とり

OILMANさん
nice! ありがとうございます。
by とり (2008-06-10 06:42) 

Qoo

良いですね~、沖縄時間
それだけのんびりと暮らしたいな~

殆どものがお金で手に入る時代でも
まごころは買えませんよね
人の心もお金で買えるといった輩も居るようですが
ナンセンス

沖縄の生活にあこがれます

by Qoo (2008-06-10 07:12) 

NO NAME

沖縄タイムは、やはり本島からの距離に比例してたんですね、面白いw^^
>内地の感覚・罪悪感 ユーラシア大陸を安く旅行した時に「電車の定時性を守ることがそんなに正しいこととは思わなくなった」と言ってたのと同じですね。
それもまた正しいと思います。

>信号機が1つ おおー、これはTVでクイズになってました。本当だったんですね。
>夕方から泳ぐ あー、紫外線の関係もあるんですね。でも台風の日は俺は泳がないです。勇者じゃないんで^^;nnice!です。
by NO NAME (2008-06-10 09:44) 

ジョルノ飛曹長

沖縄の海・・・もぐってお魚観察したいですよーー。
素潜りでモリで魚捕ったりもしたいですー(^_^)
沖縄体験未だ叶わず・・・結局大人に・・・しかも中年になっちゃいました。
by ジョルノ飛曹長 (2008-06-10 19:28) 

とり

■Qooさん
>ナンセンス
確かにそうですね~。
のんびりに憧れて沖縄に行ったものの、1日で飽きてしまい、なんだか落ち着かないという方もおられるそうです^^;

■夢空さん
nice! ありがとうございます。

■多分コストさん
>正しいこととは思わなくなった
これまたすごい悟りの境地ですね~!
台風の日に泳いだことは、今更ですが無茶したなぁ、と思います。
浜にオイラ1人でしたから、一歩間違えば新聞記事でした。

■ジョルノ飛曹長殿
>モリで魚捕り
おお、それはオイラもやってみたいです。
飛曹長殿、今からでもやりましょう!^^
by とり (2008-06-10 21:57) 

コスト

あちゃー、朝慌てて書いたから名前抜けてますが、僕です^^;
あとユーラシア大陸は職場の先輩が旅行して思ったことです。主語が抜けててすいません(汗()
by コスト (2008-06-11 02:05) 

とり

やっぱりコストさん^^
わざわざどもです。
ユーラシアの件は先輩でしたか。
すごい旅行されたんですね~。

by とり (2008-06-11 03:36) 

アスランマリオ

沖縄にかぎらず小笠原でもオガタイムでノンビリ。
離島は不便な面もあるけどいいなぁ~
by アスランマリオ (2008-06-12 00:23) 

くず

そんなところで何週間も生活したら、オイラ、きっと抜け出せなくなってしまう (^o^;)
憧れの生活… されど現実は厳しい…

by くず (2008-06-14 23:44) 

とり

■アスランマリオさん
「オガタイム」なんてあるんですね。
不便だけど、いいんですよね>離島

■くずさん
>抜け出せなくなって
分かります^^;
でも厳しい現実がそうさせない、みたいな。
by とり (2008-06-17 06:34) 

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