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787 エンジンテスト [├雑談]

記事に書いてませんでしたが、先月787型機のエンジンテストが行われました。

5月21日付ボーイング公式ニュースリリースによりますと、

787型機に取り付けた状態でのエンジン初起動、40分間の稼動試験が行われたのだそうです。

 

ヒコーキのジェットエンジンは推力であるだけでなく、

飛行中の機体のあらゆるパワーの供給源であり、空調、防/解氷にもエンジンの圧縮空気を利用しています。

ところが787のエンジンの場合ちょっと変わっていて、以前の記事にも少し書きましたが、

エンジンから圧縮空気を抽出するのを止めてしまいました(ノンブリード方式)。

ジェットエンジンには機内で使用する電力を発生するために発電機がついているのですが、

787の場合、同程度の大きさのヒコーキと比べて4倍強のものをつけました。

この大型の発電機で発生させた電力によって必要をすべて賄おう。という考え方です。

 

圧縮空気抽出によるエネルギーロスはなくなりますし、

高温の空気を機体各所に送るパイプの取り回しが電気コードに置き換えられるので、

軽量化、整備性が向上します(このメリットはFBWに似てますね) 。

実際エンジンカバーを開けると、内部は様々なパイプ類がびっしりとエンジンを覆っているのです。

まるでラピュタの巨大飛行石のように。

オイラはまだこの新エンジンの中を見ていないのですが、大分スッキリしてるんでしょうね。

ボーイングではこの新方式により燃費が8%向上する。としています。

半面、エンジンの軸回転を大量に電気に変換し、それを機体各所で再び変換しなければなりません。

エネルギーは変換によってロスする割合が大きいので、こう何度も変換を繰り返すより、

圧縮空気をそのまま使えるのであれば、そのまま利用する方がエネルギー効率だけ見ると良いハズなのですが…。

ということで、この方式に首を傾げる専門家もいるのだとか。

実際の運用を通してこの方式の長短がおのずと明らかになるだろう。

とされています。

 

さらに、787ではエンジンの始動方法も従来とは異なります。

大型エンジンの場合、従来はエンジンに圧縮空気を送り込み、「スターター」と呼ばれる装置によって

圧縮空気を軸回転に変え、これでコンプレッサーを回し、点火、始動していました。

787のエンジンもコンプレッサーを回すのですが、圧縮空気ではなく電気を送ってもらい、

この電気でエンジン内の大型発電機をモーターとして利用することにしました。

小型エンジンの始動は従来から電気式だったのですが、

大型機の電気式起動は民間航空機史上初のことだそうです。

 

「ノンブリード方式」と「電気式起動方式」は、大型の発電機/モーターがあって初めて成立するものですから、

2つでセットと言えるかもしれません。

いずれにせよ、「プラスチックでヒコーキを作ってしまう」というだけでも大変革ですが、

随分大胆な変革を1つのヒコーキに一気に盛り込んだものだと思います。

テストの結果、無事にエンジン起動しましたし、全システムへのパワー供給も予定通り行われたのだそうです。

 

ボーイングが公表した初飛行は「6月までに今四半期後半」というものでした。
*tooshibaさんのご指摘で修正致しました。

本日の時点で残りあと17日ですが、間に合いますでしょうか。

 

(続きます)


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