B787・1 開発開始までの迷走 [├雑談]
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ボーイングの787ドリームライナーが先日ロールアウトしましたね。
以前から787関連の記事を書こうと思っていたのですが、これはその第一弾です。
B787は主翼の下にエンジンを1コずつぶら下げた、旅客機としては最もありふれた外見をしています。
ヒコーキに興味の無い方なら、何十年も前から飛んでいる似たようなヒコーキと並んでいても、
見分けがつかないのではないでしょうか。
それでいて、787はこれまでの旅客機とはまったく異なっています。
今回は787の開発に至るまでの経緯をまとめてみました。
ヒコーキ好きの方にとっては分かりきったことばかりで、何ら新鮮味の無い内容だと思います。
個人的な資料用ということでご了承くださいませ。
1987年6月
エアバス初となる4発機A340が航空会社からの発注を受け、開発本格化(1991年初飛行)。
1989年
エアバスはB747の対抗機UHCA(ウルトラ・ハイ・キャパシティ・エアクラフト)構想の作業開始。
1991年
ボーイングはエアバスの動きに対し、胴体を延長した747ストレッチ、総二階建ての747ダブルデッキ、全くの新造である「ニュー・ラージ・エアプレーン」の3つの構想を発表。
1993年1月
エアバスはUHCAとは別の大型輸送機、VLCT(ベリー・ラージ・コマーシャル・トランスポート)構想をボーイングと共同で発表。ライバル同士で開発に当たろうとする。
1994年6月
エアバスは、UHCAをA3XX(530席~570席の100型と、630席~680席の200型の構想)として計画に着手したことを発表。VLCT計画は中止。
一方ボーイングは既存の747‐400をベースに、機体を6メートルを延長した530席の747‐500X、18メートル延長した600席の747‐600の計画を発表。既存機の改良であり信頼性が高いという点を強調し、強気のセールスを行う。マーケティングでは、747ユーザーのほとんどが747の大型化を望んでいるとの結果を得たが、エアラインの要望を詰めていくにつれ、各社の思惑が入り乱れ、ボーイングを苦しませることになる。
1997年1月
ボーイングは747‐500X/600計画を凍結し、当面のつなぎとして747‐400型の機体を延長して60~80席ほど増やし、航続距離も1万4000キロメートルに延長した747‐400LR計画を発表。ところが747‐400LRは747‐500X/600よりもさらに中途半端な機体となってしまい、思うほどにはエアラインの注目を集めなかった。またA3XXが大量の新技術を次々に盛り込むのを見せ付けるのに対し、ベースとなる747は発表から30年以上経過しているため、評判は芳しくなく、受注が得られる状況ではなかった。
2000年1月
ボーイングは新たな構想として3段階の747X計画を発表。第1段階は、エンジン出力を増強し、主翼を補強して航続距離を伸ばした747‐400X、第2段階が747‐400Xを全体的に一回り大きくし、さらに航続距離を伸ばした747X、第3段階に747Xの機体を延長した747Xストレッチ型で、これは747‐400に比べると全長を10メートル、翼幅を5メートル拡大するというものだった。
新規開発であるA3XXと比べて747X計画は既存機改良であり、第3段階までのプログラムをA3XX納入開始予定である2006年より1年早くできること、開発費を抑えられることからA3XXより低価格となることをアピールした。
この計画でのボーイングの狙いは、エアバスにA3XX開発を断念させることにあり、また断念するだろうとの読みもあった。さらに、日本企業がA3XX開発(アエバス側は日本に対し、10パーセントを負担してもらいたいと打診していた)に協力しないよう、首脳がたびたび訪日して、「747Xの日本担当比率は777の21%を上回るであろう」と伝える。
2000年12月
エアバスはA3XX受注獲得。これを受け正式にA380として開発に入ったと発表。
これはボーイングの予想に全く反したもので、A380が実際に完成すれば、いくら改良しても747Xの陳腐化が顕わになることは明白であった。
2001年3月
ボーイングは需要が見込めないとしてA380に対抗して長年計画していた747Xの開発延期を発表。A380開発が阻止できなかったボーイングは次に、将来必要な旅客機は音速に近い速度で巡航できる高速機であるとし、高亜音速中型旅客機「ソニック・クルーザー」の開発を優先すると発表した。
「ソニック・クルーザー」の概要は、巡航速度はM0.95以上、巡航高度は40,000ft以上、客席数は100~300(B737~B767クラス)、航続距離は9,000nm(約16,600km)以上というものだった。
2001年6月
ボーイングはパリエアショーにて、「ソニック・クルーザー」開発の狙いを説明。
将来航空需要が伸びるという予測はエアバスと同様。しかし超大型機A380を開発するエアバスとは異なり、高速・中型サイズで航続距離の長い機体を新規開発するのは、民間航空輸送のあり方が、基幹空港間を大型機で結び、基幹空港から地方空港へのローカル便を伸ばす「ハブ・アンド・スポーク型」から、基幹空港を持たずに地方空港間を直接結ぶ「ポイント・トゥ・ポイント型」に変わると予想しているため。
現在のハブ・アンド・スポーク型の路線構成では、ハブ空港の発着便の混雑がひどくなって旅客需要の増加に対応できなくなる上に、地方空港から地方空港への旅客は航空機を乗り継がねばならない。このことからボーイング社は、将来の民間航空路線の構成は、個々の空港を需要に合ったサイズの機体で直接結ぶ「ポイント・トゥ・ポイント型」に変わると予想。そのような輸送需要に合致する機体こそ、「ソニック・クルーザー」であるとした。
2001年9月
アメリカ同時多発テロ発生。航空業界不況、燃料価格高騰。
2002年2月
「ソニック・クルーザー」の研究開発チームに米ボート社が参加
(ボーイング公式サイト内のアーカイブを見ると、同機の開発チームに様々な企業が次々に加わっている)
2002年7月
「ソニック・クルーザー」の試作胴体セクションでテスト
2002年12月
「ソニック・クルーザー」は速度性能を重視するあまりコストが高くなってしまった。一方で航空業界の不況はまだまだ続くと予想されており、少しでも運航経費を抑えたい航空各社の関心を得ることができず、ボーイングは「ソニック・クルーザー」の開発を凍結。
そこでボーイングは計画を変更し、速度よりも効率を重視したB767クラスの双発中型旅客機を開発することにした(実際には複数の開発計画が並行しており、事業化する優先順位が入れ替わるだけ。開発が延期された747X計画は後に747‐8として事業化されている)。
ボーイング民間航空機部門社長兼CEOは2002年を総括し、「航空業界全体が不振にあえぐ今、航空会社が最も望んでいるのは「効率性」であることを確信した。 ボーイング社は、次期航空機を今日の航空機よりも約15‐20%燃料効率がよく、運航効率の高い「Super Efficient」機の開発に注力していくことを決定した。同機の運航開始は、航空業界回復後の2008年を予定する」と述べている
こうして、当初UHCA(A380)開発阻止のために様々な747の派生型を発表したボーイングでしたが、一旦A380の開発がスタートすると、一転して「ポイント・トゥ・ポイント」を提唱。「ソニック・クルーザー」を経て研究段階でY2と呼ばれていた7E7の開発へとつながっていくのでした。
787ですか。
もう8番なんですねー(^_^)
でも最近ではぱっと見ても機種がイマイチわかりません。(^_^;;
飛行機好きとしてこれはちょっとまずいので勉強せねば・・・
by ジョルノ (2007-07-21 21:39)
いつものことですが、博識に脱帽しています。
最初に寄せさせていただこうと思ったコメントが、なんだかとんでもない内容になってしまったので、勢いで自分の記事にさせていただきました。
トラックバック↓
by tooshiba (2007-07-21 22:22)
専門用語はわからない僕ですが、とにかく
飛行機の製造や開発については国家規模のプロジェクトであり、
さまざまな人間の思惑が交錯しているのは十分に感じ取りました。
今回のボーイング社の新型は、日本の企業の新技術や工夫が
こめられているとあって、日経関係のメディアでも大々的に取り上げられ、
飛行機に詳しい人間もそうでない人間も、日本経済を気にする人間も、
相当な興味を示していたようでした。ただ、日本企業の関係比率が
高いというだけでお騒ぎしていた自分も恥ずかしい…w
この開発秘話だけでも1冊のハードなドキュメンタリー小説になりそうですね。
by ひろ茶 (2007-07-22 00:41)
勉強になりました。
by sak (2007-07-22 05:38)
熾烈な競争なのですねぇ~。
勉強になりました。
僕は、みんな同じに見えてしまうタイプの人なのですけど(゜ー゜;Aアセアセ
by torakki (2007-07-22 05:45)
皆様 コメント、nice! ありがとうございます。
■letterwritin.. さん
nice! ありがとうございます。
■tooshibaさん
TBありがとうございます。tooshibaさんはじめ鉄の方は、車輌をチラッと見ただけで「アレは*○$△#・・・」とか分かるじゃないですか。オイラに言わせてもらえばあちらの方がよっぽどです。オイラ旅客機見分けるの苦手だし。(^^;
■xml_xslさん
nice! ありがとうございます。
■こけもも:さん
nice! ありがとうございます。
■ジョルノ飛曹長殿
もう8。早いですね。
9までいったらどうするんでしょうか??
オイラも双発見分けるの難しいです。特にエアバス!
最後は窓の数とか、ドアの数とかで見分けるんですよね。
ちょっと気力が・・・(^^;
■Krauseさん
nice! ありがとうございます。
■ひろ茶さん
>思惑が交錯
そう言ってもらえると嬉しいです。
調べていくと本当はもっといやらしいことが出てくるんですけど、あまりにも生々しいので記事には含めませんでした。
■sakさん
ありがとうございます。┏oペコッ
■torakkiさん
オイラはtorakkiさんみたく鳥を見分けられません。(^^;
by とり (2007-07-22 07:10)
おはようございます
業界の動向がよーくわかりますね!!!
787はANAが開発に参画しているので
初フライトは日本で開催される~
今から楽しみですね
by ハイマン (2007-07-22 09:15)
勉強になりました。
それぞれの機体に、開発や生産に関わった多くの人たちの期待が込められていることでしょう。
乗客の立場としては、
個人的には、2-3-2の座席配列の767や、
2-4-2のエアバスA300が好きです。
・・・内側の座席からも1人だけで通路に出れるので。
777の3-4-3は、窮屈な感じです。
by おろ・おろし (2007-07-22 09:49)
留守中のご訪問ありがとうございます
ボンバルディアは行きだけでした。
帰りはドブロブニクからフランクフルトまでクロアチア航空の737でした。
by miffy (2007-07-22 14:38)
■ハイマンさん こんばんは。
よく分かると言って頂けるとホッとします。
>今から楽しみですね
本当にそうですね。青い目をしたヒコーキマニアが日本にやってくるのかしらん??
■おろ・おろしさん
>乗客の立場
仰る通りと思います。オイラみたいなエコノミー専門の客にとってはヒコーキが大きいというのは、囚人席に座る確率が高いということですから。(^^;
超大型機を作るなら、通路3本にして、2-4-4-2 とか。
駄目ですかねぇ??
■miffyさん
珍しいヒコーキに乗りましたね~
ご無事で何よりです。^^)/
by とり (2007-07-22 21:09)
いつもいつも、よく調べられており関心しています。(脱帽)
ずい分と日本企業がかかわっていますが、そろそろYSの二代目が出来ないかな~?
by マリオ・デ・ニ-ロ (2007-07-23 01:11)
勉強になります。
もうJALやANAも受注してるみたいですね、はやく乗ってみたいです。
by アスキ (2007-07-23 13:14)
■アスランマリオさん
いえいえ、単なるコピペですから。
>YSの二代目
こっそり作っちゃえばいいのに(爆
■アスキさん
オイラも早く乗ってみたいです。
by とり (2007-07-23 19:13)