交通機関とエコ その2 [├雑談]
■船の話
前回の記事でも書きましたが、「出力は速度の三乗に比例する」という公式は船にも当てはまります。
速度を上げるごとに増えていく水の抵抗はバカになりません。
水の密度は空気の800培なので、たとえゆっくり進んでいても、
船体と水が接触しているだけで生じる大きな「摩擦抵抗」というのもあります。
「この水の抵抗をなんとかできないか…」
ということで考え出されたのが、ホバークラフト方式(一部水に入りますが、水中翼船も狙いは同じですね)。
ホバークラフトの「空気の力で船体を浮かび上がらせる」という方法は、
普通にイメージするよりずっと小さな力で可能です。
ホバークラフトは、浮上用と推進用、2つのエンジンを積んでいるのですが、
その出力の割合は、オイラが調べた範囲では浮上2割、推進8割が一般的のようです。
大きさ、狙う性能でこの割合は変わるのでしょうけども。
出力全体のたった2割の力で水の抵抗とオサラバできるわけですから、これは素敵です。
東京-小笠原諸島就航予定だった、世界最大級の超高速船TSLもその1つ。
この船は、総アルミ製で船体を大幅に軽量化し、ホバークラフトのように空気で浮き上がり、
ガスタービンを使用して、70km/hという速度を可能としました。
通常の船の約2倍のスピードです。
新技術を使い、少ないエネルギーでより早く、という次世代の新交通を狙ったものですが、
ホバークラフトも、水中翼船も、TSLも、スピードを増そうとすると、同じことがネックになります。
空気抵抗です。
少ないエネルギーで浮かび上がり、船にとっての二大抵抗である、
摩擦抵抗と造波抵抗を劇的に減らすことは可能なのですが、
「出力は速度の三乗に比例する」という呪縛から解放されることはないわけです。
ご存知の通りTSLは、一般船舶の約5倍の燃料代がネックとなり、燃料費高騰のあおりを受け、
2005年末に就航予定だったのが、中止となってしまいました。
TSLは、重油ではなくより高価な軽油を使用するため、「燃料代が5倍」といっても、
5倍の燃料を消費するわけではないんですが、一般的に感覚からすると、
「速度はたったの2倍なのに、なんで燃料が5倍も増えるの??」てことになると思います。
でも「出力は速度の三乗に比例する」の法則を知っていれば、
速度が倍になると、出力は三乗倍で8倍必要→単純に考えると燃料もそれだけ必要。と考えます。
それを5倍に留めていますから、流石TSLと思います。
このTSL、莫大な建造費の方も問題になっていますが、
原油高が更に進んだ現在なら、造ることすらなかったかもしれません。
また、より少ないエネルギーで水面に浮かぶ方法として、上述の水中翼、ホバークラフト方式とは別に、
「地面効果」というのもあります。
地面効果については次の記事で簡単に書きますが、
この効果を利用して水面を滑るように飛ぶヒコーキ(船?)もあります。
この方式を使ったものとしては、旧ソ連が研究・開発していた「カスピ海の怪物」で知られるラム・ウイング(WIG)
が有名ですが、日本をはじめ、各国でかなり以前から研究が続けられてきました。
飛行中は水と一切接しないので水抵抗はゼロになり、普通のヒコーキより少ないエネルギーで飛ぶことが可能です。
しかしなかなか実用化しないのは、海面スレスレを飛ぶため、波高制限が厳しいのと共に、
やはり燃料消費が多いことがネックになっているのだそうです。
ホバークラフト、地面効果、いずれも少ないエネルギーで浮かぶことは可能ですが、
速度を上げた途端、三乗の法則の影響を受けてしまいます。
「浮上2割、推進8割」。
浮かび上がるのにたった2割で済む。たった2割で水の抵抗が無くなる!
一見とても素晴らしいことに思えるのですが、
速度を上げようとすると、たちまち推進に大出力が求められてしまうわけで、
見方を変えるならこの割合は、速度を上げるごとに増えていく空気抵抗が如何ともし難いということを
如実に示してると言えるのではないでしょうか。
いっそ潜水艦みたいに潜っちゃった方が速いんですかね。
by ccq (2008-01-07 20:46)
こんにちは。
燃料油高騰の影響で、これからは空力重視の外観の船ができたら面白いですね。
また、300キロ以上で走るレーシングカーでさえ毎年、究極を追い求めて過激なスタイルに変身するのを見ると、空気抵抗と人との戦いはまだまだ続くんでしょうね。
by OILMAN (2008-01-07 21:19)
こんにちは♪
「探偵ガリレオ」の柴崎コウになった気分です(@。@)~*
飛行場に行ったとき、間近で飛ぶところを見て、理屈ではなく感情で何で浮かぶの~?と驚いた記憶があります。とりさんみたいに理論をわかってると、すんなり納得できたかもしれません。
TSLって、就航とりやめになってどうしたんでしょう。
そんなに速い船だったら、乗ってみたいですよね♪
by (2008-01-07 22:06)
こんばんは^^
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%AD%E3%83%A3%E3%83%93%E3%83%86%E3%83%BC%E3%82%B7%E3%83%A7%E3%83%B3
(スーパーキャビテーションの項を参照のこと)
ロシアのミリヲタはこんなこと思いついたそうです。
あッ!たまたま見つけただけなので勘違いしないでくださいね^^
by まさ (2008-01-07 22:18)
空に海に。深いなあ。
これで大地を制覇したら、とりさんの完全試合(もちろん勝利)ですね。
( ̄ー+ ̄)キラーン
どこか茶々を入れられるところは・・・ガサゴソ>マテ
by tooshiba (2008-01-07 22:28)
小笠原では船の名前も公募して決定していて、大変盛り上がってました。
しかし、採算には勝てませんでした。
by マリオ・デ・ニ-ロ (2008-01-07 23:27)
とりさんの説明よくわかります^^
by letterwritingday (2008-01-08 00:37)
う~む、とまたまたわかったつもり。
by 赤と青 (2008-01-08 02:21)
皆様 コメント、nice! ありがとうございます。
■xml_xslさん
nice! ありがとうございます。
■ccqさん
あー、そんなこといいますよね。
どの位速くなるんでしょう??
■OILMANさん
>空力重視の外観の船
そうですね。500系みたいな船とか。
■夢空さま
nice! ありがとうございます。
■こいしさん
すみません、オイラ、ガリレオ見てないので分からないんですけど、理屈は分かっているつもりでも、ヒコーキに乗ってる時はそんなことどっかにいっちゃって、ワクワクです。
>TSL
三井造船玉野事業所にずっと係留されているらしいですよ。
もったいないですね。
オイラも1回2,000円位だったら乗ってみたいです。
■まささん
おおお、初めて知りました。
・・・たまたま、ですか。・・・そうですか。
そういうことにしておきます。(o ̄∇ ̄o)ニヤ
■tooshibaさん
車はtooshibaさんにおまかせします!
どこかツッコミどころがありましたら、宜しくお願いしますね。
■オデコさん
nice! ありがとうございます。
■アスランマリオさん
アスランマリオさん、ここには定期的に行かれてますからね。
残念でした・・・。
■letterwritingdayさん
そうですか?
よかった~^^
■赤と青さん
自分で実感できない理屈は正直オイラもピンとこないです^^;
■Krauseさん
nice! ありがとうございます。
by とり (2008-01-08 07:35)
あのホバークラフトというやつは地上も走れるのでとても有効な乗り物といえますね。
ブレーキががっちり効くようになれば道路も走れるかも・・・(^_^)
by ジョルノ (2008-01-08 13:07)
なるほどと思いました。
とりさんは飛行機だけでなく、船にも詳しいんですね。
しかし、燃料が高いってのは船にとってもつらいですね・・・
by masa (2008-01-08 19:04)
なるほどー、ホバーは水の抵抗を減らす目的で造られて、今度は空気抵抗が発生するという問題を抱えてたんですね。
初めて知りました、勉強になります^^
超高速船 TSLは中止も燃料費ですか、なんでも値上がり幅がガソリンの比ではなくて実質1.8~2倍近いとか聞きました。
おかげでローカルなフェリー路線(宿毛ー佐伯とか)はつぶれるとこでそうらしいです。
by コスト (2008-01-08 23:53)
遅ればせながら
明けましておめでとうございます。
おう!私の苦手な物理のお話じゃないですか(O_O)
まめ助の母、船舶免許持ってますが船酔いしちゃうんです(__;)
水中翼船はあまり揺れないと聞きますが
ホバーはどうなんでしょう?どちらも乗ったことがないです。
船酔い…克服したいなあ〜
by (2008-01-09 00:01)
空気だろうが水だろうが、地球上にいる限り
抵抗との戦いはなくならないのですね~。
by ひろ茶 (2008-01-09 01:05)
■ジョルノ飛曹長殿
>がっちり効くようになれば
確かにそうですね~。
■miffyさん
nice! ありがとうございます。
■masaさん
乗り物全般すきなんです。
船は遅い分、安くたくさん運べるのがウリですからね~。
確かに高いと辛いものがありますね。
■コストさん
>実質1.8~2倍
>つぶれるとこ
そうなんですか。知りませんでした。
ローカルな所ほど交通機関の選択肢が限られますから大変だと思います。
■ぴーすけ君さん
nice! ありがとうございます。
■まめ助の母さん
こちらこそ、今年もどうぞ宜しくお願い致しますm(_ _)m
おお、まめ助の母さん、船舶免許お持ちですか!カッコイイ。
ご自分で操縦する時は大丈夫なのでしょうか?>船酔い
水中翼船、ホバー、オイラはどちらも乗ったことないので揺れるかどうだかわかりませんが・・・あまり揺れない船が増えて欲しいですね。
■ひろ茶さん
そういうことですね~。
■こけもも:さん
nice! ありがとうございます。
■sakさん
nice! ありがとうございます。
by とり (2008-01-10 21:44)