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ジャンボの大きさが2倍になったら・3 [├クイズ]

前回までの記事で、

「ジャンボが2倍の大きさになったら、積める量は半減してしまう」

と書きました。

少なっっ !  と思いますよね?

繰り返しで恐縮ですが、翼面積(揚力)が二乗倍に比例して増えるのに対し、

ヒコーキの重さは三乗倍に比例して増えていくからこういうことになるのです。

具体的に数字を挙げますと、ジャンボの最大離陸重量に占める自重の割合は、46.3%なのですが、

機体の大きさを2倍にすると、自重が8倍になるため、この数字が一気に93%まで跳ね上がるのです。

そして、機体の大きさを2.052倍にすると、ナント!

最大離陸重量に占める自重の割合は、100% を越えてしまうのです。

つまり、乗客、燃料を積む前から既に重量オーバーで、飛べません。

 

「二乗三乗の法則」恐るべし!!

 

このように、ヒコーキは大きくなればなるほど、ウドの大木になってしまうという危険性をはらんでいるのです。

ではここで、実際のヒコーキで、大きくなるごとに最大離陸重量に占める自重の割合がどう変化するのか見てみましょう。


機 種全 長自 重最大離陸重量(MTOW)MTOW/自重
B737-60031.2m36.4t65.1t55.9%
A310-30046.7m81.8t164.0t49.9%
MD-1161.2m126.0t273.0t46.2%
B777-20063.7m138.0t247.0t55.9%
B747-40070.7m183.0t395.0t46.3%
A380-80070.8m267.0t540.0t49.4%


全長、自重の欄を見ていただければお分かりのように、下に行くほど大きいヒコーキになっております。

1番右の欄をご覧ください。

…アレ? と思われませんか?

「今まで言ってることと全然違うじゃないか!」と。

最大離陸重量に占める自重の割合は、機体の大きさにかかわらず、大体50%凸凹です。

なんでこんなに軽くなったのでしょう?

1つには、材料選定、設計、製造など、ヒコーキを造り上げていく際の様々な改良が挙げられます。

ちょっと話が逸れますが、ヒコーキは1ヶ所重くなると、ついでにあちこち雪ダルマ式に重くなってしまうという危険を抱えています。

例えば、機首が当初の計画より重くなってしまったとしましょう。

重くなった機首を支えるために、その周辺の構造も強化しなければなりません。

これで少し余分に重くなってしまいました。

ヒコーキの重量を最終的に支えているのは、地上では車輪、上空では主翼です。

それで、重くなった機首とその周辺を支えるために、車輪、主翼に至るまでの構造も強化しなければなりません。

またまた重くなってしまいました。

となると、その分車輪と主翼も頑丈にしないといけないため、更に重量がかさんでしまいます。

これでかなり重くなってしまいました。

そうすると、今までの主翼では揚力不足となり、今までのエンジンでは推力不足になります。

主翼を大きくし、エンジンも更に大きく重くなり、燃料も余計に必要です。

(実際にはこんな泥縄にはならないのでしょうが)

 

「1gの重量増は、100万円の損失」という言葉もあるくらいです。 

このように僅かな重量増が全体に大きな影響を及ぼすのであれば、逆もまた真

1ヶ所軽くなると、それに付随してついでにあちこち軽くなるという好循環が生まれます。

それは上の説明を、「機首の周辺が当初の計画より軽くなったとしましょう」

に読み替えて頂けるとよく分かると思います。

工夫を凝らし、削りに削りまくって、大幅な減量をした結果が、A380の自重なのです。

 

メーカーのエアバス社でA380の設計を進めていた際の実話ですが、

「もしこういう形に作れれば、かなり軽量になるなぁ」という部品がありました。

ところがその部品を作るためには、非常に難しい金属の削り出し加工が必要で、

世界のどのメーカーもその部品を作ることができませんでした。

最終的に、日本のあるメーカーが開発した専用マシンによって初めて製作が可能となり、

大幅な減量に成功したのだとか。

重量軽減のためのそういう努力がいくつも積み重ねられていく訳で、エアバス曰く、

「ジャンボを作った当時の技術でA380を作ったら、重量は更に10~15t は増えたはず」なのだそうです。

これは実に自重の3.7~5.6%に相当します。

 (「新技術の導入」とかは無しで、単純に大きさを2倍にすると考えてください)

などとわざわざクイズに含めたのは、そういうことでした。

特に、 B737‐600と比べてA380は、客室が全面2階建てになり、エンジンも倍の4コついています。

そういうハンデを乗り越えてこの数字ですから立派です。

ということで、機体が大きくなっても使い物になっている1番目の理由として、

減量しているから

が挙げられます。

しかし、MTOW/自重がB737よりも更に改善されているのは、単に減量したからだけではありません。

 

続きは1週間後。

(そんなの簡単だゼ!という方、よろしければコメント欄にカキコしてくださいませ)

 ↓一応コチラがヒントです。


コメント(13)  トラックバック(0) 
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コメント 13

ばう

これって「トリビアの泉」に出せないでしょうか?
by ばう (2006-07-09 16:25) 

atc_on_tower787

私も上記の話はどこかで聞いたことがありました。
大変興味深いですよね。

今現在、金属加工に関して日本はトップクラスですよね。iPod裏面の金属板は新潟県の某工場で作られているという話ですし。それ以外にも、「え!これも日本製なの!」という物が結構あるらしいです。日本人として嬉しいですね。
by atc_on_tower787 (2006-07-09 18:19) 

chi-hiro

簡単だゼ!と言ぅ前にさっぱり分からないぉバカと分かるのは簡単だゼ!ハハ
そだよね、大きくして荷物もその倍積めるのなら、何便も飛ぶ事なぃよね。
とりさんやっぱり数学のせんせやね。(笑)
by chi-hiro (2006-07-09 19:22) 

コスト

すげー!「二乗三乗の法則」ってそこまで違いでるんだ。
ウド率はおもしろい言い方ですね。わかりやすいです。
機体を大きくした分減量するか、うーん設計もそうとう苦労してますねー。
つづき楽しみに待ちます。
by コスト (2006-07-09 20:17) 

とり

■ばうさん
出て欲すいです。余りにもマニアック過ぎるので、一般受けする切り口にできるかどうかでしょうね。
あと、最近ばうさんブログごぶさたですみません。いや、ちょくちょく見てはいるんですけど、お花系の話題だと、オイラ会話の輪の中に入れないんですよ。(^^; でもいつか隙を見つけて入っていきます!
コメントありがとうございました。

■そうまうまさん
iPod裏面の金属板・・・そうなんですか!そういうの聞くと、やっぱり嬉しいですね~。
知人に自動車関係の技術畑一筋の方がいるのですが、海外への技術流出を心配してました。よく、技術の伝承が途切れることが問題になってますが、若い世代に成り手がないとか、熟練工が高齢化して引退してしまうということだけでなく、日本では会社の熟練工に対する認識、扱いが余りにもお粗末すぎる場合が多く、そのことが諸外国のヘッドハンターの付け入る隙になっているのだとか。ヘッドハンターからは、このまま日本の企業で勤め上げていては夢のまた夢のような超VIP待遇での条件が提示されるのだそうです。自分が外国に移るということが、日本に対する背信行為かも、ということも頭をかすめるとしても、結局自分の技を高く評価し、本気で望んでくれる所で発揮するやりがいというのは大きく、代えがたいものがあるのではないかと思いました。
コメント&nice! ありがとうございました。

■ちひろさん
んー、掛け算割り算までならなんとかなるんですが。”せんせ”なんて、とてもとても。あ、”せんせ”って、関西っぽいですね。先日テレビで、関西弁にあこがれる関東人が、関西人に成りすまして大阪のタクシーに乗って、バレずに会話できるか、っていうのやってました。結果は・・・すぐ見破られてました。オイラも関西弁、あこがれます。しゃべりたいです。
コメント&nice! ありがとうございました。

■コストさん
「楽しみ」と言ってもらえると、すごく嬉しいです。( ´∀`)
ヒコーキは、大きさの変化以外にも二乗三乗の法則に支配されている分野があるのですが、それはまた別記事で。
現在大型機についての評価はボーイングとエアバスで大きく分かれてます。
今回の記事を書いていて思ったのですが、大型機にすると重くなってしまうので、最新技術を使って軽量化するのであれば、その技術を駆使して一から小型機を作ったら、ものすごく省エネなヒコーキができるんじゃないかと。環境のことを考えるとどっちがいいのだろう、と思いました。
コメント ありがとうございました。
by とり (2006-07-09 22:04) 

しまふくろう

以前に某国営放送(N ? K)の特集でこの飛行機の胴体に使う梁を日本のメーカーが新素材を使って研究開発する過程を放送していたように思います。
その技術力が総二階建ての飛行機をつくることを可能にしたみたいなことを言ってましたが、小さく狭い日本の空港で現状ボーディんグブリッジ2本を飛行機に着けるのがやっとのこと。
2階部分に付けるにしてもSPOT・ブリッジの改修等狭さゆえの問題も多く、沢山の人が乗れば乗るほど、搭乗降機に時間もかかりますし、所要1時間の路線で飛行機からおりるだけで20分もかかる様では意味が無いと思います。飛行機好きのしまふくろうは実際にみたり乗ったりしたいと思いますが日本の空港には???ですネ。
それと答えも???です
by しまふくろう (2006-07-10 22:32) 

とり

しまふくろうさん
同感です。ジャンボや777が国内線にうようよしてる現状でも十分異常ですよね。
日本がA380を導入するとすればANAでしょうが、サテ、どうなるのでしょう??
>答え:お付き合いいただいてありがとうございます。きっと、「な~んだ!」と思うと思いますよ。
コメント&nice! ありがとうございました。
by とり (2006-07-10 23:09) 

まさ

こんばんは^^
出力が約2倍になったエンジンが、2つから4つに増えてるから^^

主要な空港はほとんどが海上だから、機体重量が増えると地盤沈下とかの問題もでてくるでしょうね?関空でもターミナルビルが変形してるって聞きましたし・・・。
by まさ (2006-07-11 21:43) 

とり

まささん こんばんは。
お付き合いいただき、ありがとうございます。そうかぁ、エンジンかぁ。正直、エンジンは考えてませんでした。ちょっと計算してみます。Σ(゚д゚lll)
記事の最後に、1枚の絵を追加しました。この絵の中に、今のところオイラが考えているヒントが隠されています。

ターミナルビルが変形しちゃってるんですか!やっぱりメガロフロートが良かったんでしょうか…(´・ω・`)
コメント&nice! ありがとうございました。
by とり (2006-07-11 22:46) 

tooshiba

分からないですねえ。エンジンが4機だからなんてことではないですよね?
A380の羽がB737と比べて長くなっている(全体が細身に見える)のが何か影響しているのでしょうか?
電車とか自動車なら軽くなる=燃量とか電気の消費量が減る=OKじゃない?とカンタンに思えるのですが、飛行機とか船はどうも良く分かりません・・・

でもYS-21(仮称←次世代の純国産中型機のこと)には、私も大いに期待しています。いい加減輸入(ボーイン○、エアバ○、その他)に頼るのはいかがなものかと。その飛行機たちもパーツはどうせ日本製なんだし・・・
by tooshiba (2006-07-13 00:02) 

とり

tooshiba さん
確かにヒコーキは、いくつか要素が絡み合うことが多いので難しいです。船はオイラも全然分かりません。最大離陸重量を引き上げるにはいくつか方法があるのですが、その1つに「パワーを上げる」というのがあります。ですから、「エンジンを増やす」というのはアリです。ただ、今回のA380がその方法を採っているかどうかは別ですが・・・。(これ以上書くと答えになってしまうので、もったいぶってすみません)あと、tooshiba さんのコメントの中に正解が含まれてます!土曜日までお待ちくださいませ。ヽ(´∀`) 
純国産機、作って欲しいですね~。
コメント&nice! ありがとうございました。
by とり (2006-07-13 06:44) 

マリオ・デ・ニ-ロ

最近寝不足で頭が回りません。もっとも正常時でも回りませんが。早く続きが読みたいです。
by マリオ・デ・ニ-ロ (2006-07-13 23:27) 

とり

アスランマリオさん
ありがとうございます!
>寝不足
本番までいよいよ10日を切り、現場は修羅場と化しているのではないでしょうか?仕事、ご自身の雑用をこなしながら、更に追い込み作業という状態だと思います。どうぞ体調に気をつけて、少しでも楽しめますように!( ´∀`)つt[]ドリンクドゾー
by とり (2006-07-13 23:49) 

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