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B787・3 ロールアウト以降のつまずき [├雑談]

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2007年7月
ボーイング、787ドリームライナーの初号機を初披露。ロールアウト時点で、47社より677機の受注。
式典後、初号機はエバレット工場で最終システムの設置、機内やフライトテスト用の装備など、最後の仕上げに入る。

2007年8月
ボーイングの地元シアトルのメディアは、「787の初飛行は10月以降にずれ込む見通し」と報じる。この件についてボーイングからは今のところ正式なコメントなし。 
初飛行の時期が遅れるとそれだけ認証取得のための時間も短くなってしまうため、2008年5月を予定していたANAへの初号機の引渡し時期もずれ込む可能性が出てきた。

2007年9月
初飛行はさらに遅れ、11月半ばから12月半ばとなった。胴体と主翼を接合するファスナーができておらず(ロールアウトの際は仮のファスナーで留めていた)、操縦系統のソフト制作も遅れている。ソフトは9月末に完成予定。
当初の予定では初飛行は8月後半~9月の予定だった。それがじりじりと遅れてきたが、それでもボーイングは今のところ量産初号機の引渡しは予定通り来年の5月で変更はないとしている。
初飛行は遅れるが、ANAへの引渡しスケジュールは変更しない。これは試験飛行の期間が短くなってしまうということだが、ボーイングは対策として34人のテストパイロットにより、原型6機を使用して昼夜を問わず連日テストフライトを続けることで、遅れをカバーできるとしているため。これは新型機開発としては前代未聞のスケジュールであり、多くの専門家はとても無理だとしている。
現在の受注数:708

2007年10月
ボ社、787の引渡しが2008年11月末か、12月になると発表(当初の予定より半年遅れ)。2008年8月の北京オリンピック時に787を使用する計画だった航空会社に影響。
現在の受注数:710

エアバス、A380の量産初号機をシンガポール航空に引渡し。引渡し時期が計画より1年半遅れ、開発費が膨らんでしまい、採算分岐は420機となった。現在の受注数は189機。
A380量産機の引渡し計画について。2007年はシンガポール航空向けの1機。2008年 13機、2009年 25機、2010年 45機の予定。
25日 A380、シンガポール航空による初就航。チャンギ国際空港発のシドニー便。便名はSQ380。チケットの購入はインターネット・オークションで行われ、総額130万ドル(約1.5億円)に達し、慈善事業に贈られた。

2007年12月
ボーイング、2008年末までに787量産初号機を全日空へ引渡すと発表。同機の初飛行は2008年1月の予定で、合わせて6機が試験飛行に使われる。

2008年1月
ボーイング社、2007年中の民間輸送機受注数が同社史上最高記録である1,413機と発表。機種別の内訳は787 369機、737 846機、777 141機、767 36機、747 21機。
「シアトル・タイムズ」紙、ボーイング各機の割引金額の推定を掲載。737 50億円、767 99億円、787 128億円、777 171億円、747 192億円。
787初飛行の遅れを認め、2008年中の実用機の引渡しはないと発表。また2009年末までに109機を完成させるとしていたが、これも不可能であることを認めた。 ロールアウトから初飛行まで1年近くかかることになる。 ロールアウトは2007年7月8日だったが、これはアメリカ式に書けば7月8日07年(7/8/7)となる。飛行機の呼称と同じこの日付けに固執したために醜態を晒す結果となってしまっている。 
現在の受注数:817 

エアバス社、2007年の民間輸送機の受注数が同社史上最高記録である1,341機と発表。機種別の内訳はA320 913機、A330/A340/A350 405機、A380 23機。

2008年2月
シンガポール航空のA380は昨年10月25日の定期運航開始以来きわめて順調な飛行を続けており、1月半ばまでに150回、1,100時間を飛び、2月末には1,500時間になる予定。A380の総受注数は、17社から196機

787現在の受注数:857

2008年4月
787初飛行は早くて今年10~12月にずれこんだ。787量産初号機の引渡しは2009年7~9月になると発表。
今回の遅延発表についてボーイングは「我々が今回変更したスケジュールは、達成可能かつ信頼性の高いものです。 787型機の基本設計および技術は依然として信頼性の高いものですが、ファーストフライト前の試験やフライトテスト・プログラムにおける試験など、これから対応していく課題のために、スケジュールに余裕をもたせているのです」と説明。
これまでの遅れは金属ファスナーの世界的な不足、操縦ソフト開発遅れなどで、今回主翼付け根のウィングボックスの強度に問題が見つかり、修正の必要が出てきたという。
相次ぐ遅延にもかかわらず今のところキャンセルは発生していない。原油高騰、航空各社の厳しい経営、環境問題等から787はまだ初飛行していないにもかかわらず受注は絶好調。受注金額にして1,510億ドル(約15兆円)というビッグビジネスとなった。しかし今回の遅れに対し787を発注しているエアラインはボーイング社に対する賠償請求の意向を続々と表明しており、その中には全日空、日本航空を初め、カンタス、エアニュージランド、エアインディア、バージン、英国航空などが含まれる。賠償金の支払いは40億ドル(約4,000億円)を超えるという推定もある。
今のところ2009年に25機を引渡す予定。
787の静強度試験機(ZY997)、エバレットの最終組立工場から約1,000フィート離れた構造試験装置に移動。
787現在の受注数:892

2008年6月
テストフライト初号機(ZA001)、パワーオン(外部電源をつなぎ、機体の電力システムを機能させること)。電気系統のテスト開始。6月中には同テストをすべて終わらせる。ボーイングは「パワーオン」から、ほぼ100%完了したシステムのハードウェア/ソフトウェアまで、順調に推移していると発表。
11月には初飛行を予定。テストフライトに使う原型機は6機(ZA001~ZA006)。うち2機が完成しており、3号機も5月から最終組立てに入った。他に2機の地上試験機(ZY997,ZY998)も合わせて、全部で8機が型式証明の取得試験に使われる。
これらの試験が順調にゆけば、全日空向けの量産初号機は当初計画より15ヵ月遅れで、2009年夏に引渡される。
当初計画の3日に1機、月産10機の量産態勢になるのは、今のところ2012年で、予定より2年遅れになる。

英フライト・インターナショナル誌、全日空は間もなくエアバスとボーイングの両社に対し、それぞれA380747-8の見積もり提案を求める模様であると伝える。いずれか採用になった方には5~10機の発注をする予定。

2008年7月
787
受注数896機

A380受注総数191機、A350XWB受注総計379機。787の相次ぐ製造遅延と爆発的な受注の結果、787は762機受注の時点で2014年までの製造分が売り切れた。つまり今から787を発注すると、確実に2015年以降になってしまうわけで、そうしたこともあってか2013年デビュー予定のA350XWBが受注を伸ばしている。

2008年8月
製造遅延が続く787に初の解約。アゼルバイジャン航空によるもので、同社は他のボーイング機に変更することで対応。

2008年9月
ボーイング、ストに突入。27,000人の従業員が職場を放棄。組合側の要求は、787の受注が絶好調であるのだから我々に還元せよ、多過ぎる外注の見直しをせよ、というもの。
作業はさらに遅れ、初飛行は早くて12月末、おそらくは来年1月、引渡し開始はさらに遅れる見通し。
787の高圧テストを完了。約2時間かけてゆっくりと圧力を上げていき、実際の運航時における予想最高レベルの150%に相当する14.9 psigの内圧を機体にかけるというもの。
787確定受注数54社から903機、仮注文306機、総数は1,209機に。

2008年11月
ボーイング、スト終結。合意内容は、今後4年間で15%の賃上げ、年金受給額は16%の即時増と契約期間において最低8,000ドルの一括払い。
コンコルドは1967年12月のロールアウトから初飛行まで15ヵ月を要した。西側の実用旅客機としてはこれが最長記録だったが、787は今月に入って16ヵ月となり、不名誉な記録を更新しつつある。

2008年12月
ボーイング、787の修正日程を発表。初飛行は2009年4~6月、引渡し開始は2010年1~3月。日程遅延の理由は先般の2ヵ月に及ぶ従業員のストとファスナーの取り替え作業に時間がかかるためとしている。
ファスナーは単に不足しているだけではなく、これから1機あたり8,000個のファスナーを取り替える必要があるらしい。
さらにソフトウェア問題。ソフト自体に欠陥があるわけではなく、様々な下請け企業からのソフトを最終的に1つにまとめるのに予想外の時間がかかるという。
機体のオーバーウェイトも解決していない。現在製造中の787-8は当初の設計より7トンも重くなってしまった。そのため航続距離は7,600~8,000浬(nm)の設計案に対し、6,900浬にととどまる可能性が出てきた。
787受注数910機

2009年1月
原油高騰、昨年末からの世界同時不況が航空業界にも直撃。
例えばボーイングとエアバスの受注数。近年両社の受注数はほぼ拮抗しており、両社合計の受注数は2005年 2,140機、2006年 1,874機、2007年 2,881機、2008年 1,446機と、昨年は前年比で一気に半減してしまった。 
ボーイング、民間航空機部門の従業員の約7%に当たる約4,500人を2009年中に削減すると発表。世界的な景気悪化の影響で受注の減少が予想され、リストラを急ぐ方針とみられる。

ロシア航空会社大手の「S7 Airlines(S7エアラインズ)」(別名、シベリア航空)が発注していた787、15機の注文をキャンセルした。こちらは昨年8月のアゼルバイジャン航空と事情が異なり、景気後退に伴うロシアの金融機関による貸し渋りの影響により、新型機導入に必要な資金調達のメドが立たなくなったため。

2009年3月
テストフライト初号機(ZA001)、工場内での最終テスト前に塗装を完了。
受注数が昨年末の910から878に減少。相次ぐ遅延、世界的な不況から更に解約が出るかもしれない。 

 


「787今後のスケジュール」(2009年8月27日 ボーイング発表)

初フライト:2009年末までに(当初予定は2007年8月後半~9月だった)
ANAに初引渡し:2010年第4四半期(9~12月)(当初予定は2008年5月だった)

787-3(最初に生産される基本型に比べ、航続距離は短いが座席数の多いタイプ。事実上日本御用達)完成:2010年中旬
787-9型機(最初に生産される基本型に比べ、航続距離、座席数を共に増やしたタイプ)完成:2010年後半

 

この記事の資料
ボーイング公式サイト/ニュースリリース■(リンク切れ)      
航空の現代
(筆者死去)


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