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九州旅行・4日目(後編) [■旅行記]


(終日硫黄島)

 

4日目(後編)

ということで村営フェリーは硫黄島に到着しました。

下船したのは5人ほど。ヤングが多いです。

いかにも「観光で来ましたっ」という感じなのはオイラを含めて3人でした。

岸壁に降りてしばらく港の様子を見ていたのですが、

下船した人はすぐ港からいなくなるし、船は積み下ろしが終わるとすぐ出港してしまいました。

これで明日の朝までこの島から出られません。

とりあえず荷物が重いので宿に荷物を置くことに。

感を頼りにウロウロ。

 

小さな店先に集まっていたおばあさんたちが一斉にこっちを見ています。

なんとなく監視されているような気がして逃げるようにあっちの方へ。

しかし暑い! 確か、本日の最高気温は27℃とか言っていたハズ。

テレビで「北海道では初雪」とか言ってたっけ…。

坂の途中で荷物を下ろし、水を飲んで地図を確認。

ちょうど駐在所でお巡りさんが立番していたので宿を尋ねると、ニコニコしながら教えてくれました。

宿到着。イジワルバーサンとの対面です。

 

挨拶を済ますとおばあさんは部屋に案内してくれ、

「暗くなるので温泉からは6時までには戻ってきた方がよい。

温泉では浸かるだけ。濡れた手で顔を触ってはいけない。

温泉の周辺には水を飲める場所がないので、脱水症にならないように、ここで飲み物を買って行くがよい」

とそれだけスラスラ説明すると、どこかへ消えてしまったのでした。

既にイジワルバーサンというイメージが固まっているので、飲み物情報は儲けるためとしか受け取れない。

オイラは水を十分持って来てるから買わないもんね~。

カメラと水とカロリーメイトだけデイバッグに詰めて部屋を出た。

民宿を1人で利用するのは初めてです。

…おばあさんの姿がまったく見えないんだけど、勝手に出掛けてもいいんだよね?

一応「行ってきます~」とおばあさんが居そうな方向に声を掛けてから出掛ける。

明日の朝10:15出港だし、お天気は下り坂だし、今日中に飛行場の見学をしておかないと。

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延々坂を登って行きます。暑い~。

途中でドコモ鉄塔発見。

オイラのauは島に着く前からとっくに圏外でした。

やっぱりドコモのカバー率はすごいですね。

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宿を出てから30分 やっとここまで来ました。

たった30分なのですが、坂がキツイので疲れますた。_| ̄|○ il||li

無事飛行場の見学を終え、ちょっと休憩して後「恋人岬」に行ってみることに。

宿から更に1.5キロ?ほど遠ざかることになるので、どうしようか少し迷ったのですが、

他に行くところもないのでとりあえず行ってみることに。

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高低差が激しくて、徒歩の移動は結構大変です。

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島にはあちこちに牧場があって大きな黒牛がいます。

篠?がたくさん生えていて、ブチッ、ブチッ、と食べてました。

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「岬橋」手前の展望台

手すりの向こう側の篠が撮影の邪魔になるので、手すりを乗り越えて枯草の上に飛び降りたらその下がなくて、

1mほど落ちてしまい、手をついてケガしてしまいました。イテテ!!

もう少しでオロナミンCの助ける人居ない状態になるところでした。

手すりを乗り越えるのは危険なのでやめましょう。

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内側の水の色がまったく違ってますね。

途中、「岬橋」というとても眺望の良い橋があったのですが、橋の真ん中に車が止まっていて、

お兄さんがビデオ回してました。

挨拶しようかと思ったのですが、お兄さんは撮影に没頭してるし、声が入ると悪いかと思ってそのまま通過。

そして恋人岬到着。休憩~。

あれほど晴れていたのに、いつの間にか上空は雲に覆われてしまいました。

そして沖の方に巨大な暗雲が。

雲の進み方からすると直撃は免れそうですが、心配なので早目に戻ることに。

カサ持ってないし。

出先で黒雲が現れると、もうそれだけでドキドキです。

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「岬橋」から。

やや左側の集落の中にオイラの泊まった民宿があります。

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だんだん日が傾いてきました。

これからがオイシイところなのですが、雨具持ってないオイラにとって、この雲の暗くなり方は恐いです。

雷注意報も出てたし、ここから宿へは一生懸命歩いても30分はかかるはず。

急げ~。

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画面左側の岩肌の下っ側からぐーっと迂回してここまで戻ってきました。

ここまで来れば、もう宿までは5分ほど。

最悪雨が降ってきたら、ビニール袋にカメラ入れよう。と考えていたのですが、黒雲はどこかにいってしまい、

結局今日は雨降りませんでした。

「6時までに戻ってくるがよいわ!」と言われていたのですが、まだ5時前です。

このまま宿に戻ったら、「なんでこんなに早く戻ってきたか!」とゴボウでぶたれるかもしれません。

でも今からおばあさんの言っていた数キロ先の温泉に歩いて行く余力はもう残ってません。

港周辺をうろつくことに。

島の住宅地周辺では、そこら中に孔雀が歩き回っており、

安徳天皇の墓があったり、非常に歴史のある島でした。

実はオイラ、飛行場を見に来ただけで、この島については何も知りませんでした。^^;

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6時頃宿に戻りました。

「戻りました~」と声掛けてみましたが、奥の方で「カタッ、カタッ」と音がするだけで応答なし。

うぅ、オイラは一体どうしたら…(;´Д⊂)

とりあえずいそいそと指定された部屋へ入って戸を閉め、落ち着かないので、部屋に置いてあるノートを見てみました。

この部屋に泊まった客の感想がビッシリと綴られています。

おおよそ15年前から5年位前までの記録なのですが、

島の素晴らしさ(特に温泉)と共に、イジワルバーサンの飾らない人柄を絶賛する熱い言葉に溢れていました。

ア、アレ??

 

ノートを読み終わると7時。

(コリャ、本当に食事なしかも(´・ω・`))と思い始めた頃、「食事の用意ができましたよ~」と声がしました。

実はネットでこの宿を酷評する中で、食事のことが挙げられており、

「ただの冷凍食品を並べただけ。不味い。最低。これが客に出すものか!!」 みたいなことが書かれてました。

(い、いったいどんな手抜き料理が??)

もしかしてカップラーメンとバナナとか??  などと思いながら食堂へ。

案内された部屋には、大きな食卓にいろんなご馳走が並んでました。

おばあさんが釣ったという魚、島で採れる野草の天ぷら(名前忘れた)など、普通にとても美味しかったです。

醤油がビックリするほど甘かったですけど ^^;

所用で4日前からここに宿泊しているという鹿児島市在住のおばさんと、

今日のフェリーで来たヤローがオイラを含めて3人。

合計4人の客なのでした。

この島で下船した5人ほどのうち、いかにも「観光で来ました」という感じの3人がもれなくこの宿の客になっているのです。

他にも宿はあるのにすごい偶然だな~。

などとこの時は思っていたのでした。

 

内1人は、「岬橋」でビデオ撮影していた彼でした。

なんでも前日空路で鹿児島空港に着く予定だったのが、件の訓練機の事故で空港が閉鎖になってしまったため、

代わりに降ろされた別の空港から鉄路やっとの思いで鹿児島までやって来たのだそうです。

大の温泉好きで、九州内の温泉を巡っていてこの島の温泉にも入りに来たのだそうです。

この島には複数の温泉があるのですが、彼も、そして部屋のノートでも絶賛の嵐だったのが「東温泉」。

断崖絶壁の波打ち際にある露天で、知る人ぞ知る、超有名温泉らしいです。

オイラは入らなかったと言ったら、

「あの温泉に入らなかったらこの島に来た意味がない」 とまで。

宿のおばあさんから「せっかくだから明日の朝入ってきなさい」と言われました。

 

もう1人も下船時の荷物と服装を覚えている人でした。

3つの島のドコで下りようか、直前まで迷っていて、なんとなくこの島に降りたのだそうです。

みんなでご馳走をつつきながらの自己紹介は、

なんとなく「どうしてこの島に来たか」を申告する流れになって参りました。

正直に「飛行場だけを見に来ましたっ」などと言うときっとドン引きだろうと思い、

おばあさんに竹島入港の際のタイコのことを聞いてみて話題を変えるオイラ。

すると、アレは特別な客がある時だけのものだということが判明。

つまり今回は、赴任して来るK先生のためのタイコだったのです。

我々はK先生のためのタイコに感動して拍手していたのでした。

子供たちは、「別にアンタたちのためじゃないし」とか思ってたんでしょうかね ^^;

珍しいものを見せてもらったし、まぁ、いいですけど。

しかしこれで話の流れは、

「どうしてこの島に来たか」から完全におばあさんによる島のいろんな話へと完全に変わったのでした(o ̄∇ ̄o)ニヤ

 

島に籍を置いているだけの人、籍はないが仕事で長期滞在している人などいて、

この島には実質120人位住んでいるのだそうです。

120人。

学校だと3クラス分ですね。

お互い相手の性格までよく知っており、

「今日あの人は午前中畑に居た。昨日は△△に居た」など、すべて把握されてしまいます。

島から鹿児島に行くことを「鹿児島に上がる」と言うのだそうです。

 

潮風と共に、この島特有の硫黄と亜硫酸ガスのせいで、

「2年前に買った」というポットの淵の部分がもう塗装が取れてサビでボロボロ。

こんな有様なので、車はほんの少しのキズでも、たちまちそこからサビてしまうため、

補修には大変なお金がかかるのだとか。

そういえばネットではここのレンタカー料金について「ぼったくり」とか書かれていたっけ。

 

この宿のおばさんは孔雀を手なずけており、宿の前に"ボタモチ"をすると、叱って3日ほどエサをやらない。

するとそんなことはなくなるのだそうです。

他の孔雀が"ボタモチ"をした時も、おばさんに特になついている孔雀を犯行現場に連行して代表して叱ると、

他の孔雀もそんなことはしなくなるのだそうです。

おばあさんが元気がないと、肩に頭を乗せてきたり、顔を覗き込んだり。

「アレは孔雀の姿をしているだけで、人間とまったく同じだ」と話していました。

 

4日前に鹿児島市から来たおばさんは、この宿で連日供されるご馳走に感激していて、

この間に食べたご馳走がいかに素晴らしかったかを力説していました。

確かにおばあさんの言葉の端々には、

料理が大好きで、客に少しでも美味しいものを食べさせて島の思い出にさせてやりたい。という気持ちが表れてました。

それでも、食材の多くはフェリーに頼っているので、欠航してしまうと大変なのだそうです。

前述の通り、3つの島を結ぶフェリーは2日かけて島を往復するのですが、

確実に鹿児島に戻って来れる状態でないと、すぐに欠航するのだそうです。

実は明日から天気が崩れるため、今日の宿泊予定はキャンセルだな。と思っていたのだそうです。

そんな状態なので、欠航が続いてしまうと食材が底をつき、

客も島から出られずに宿泊日が延長になってしまい、連日保存食を供することになってしまうのだとか。

いつでも店先になんでも並んでるのが当たり前の生活に慣れていると想像できない世界ですね。

(ネットで酷評されていた最悪な食事事情というのはこのことだったのか…)

などと考えながらおばあさんの話を聞いていたのでした。

この頃には、宿についてのネット情報はきっと誤解からくるものなのだろう。という考えに変わっていました。

ノートに書かれている通り、おばあさんは飾り気のないとても気さくな方なのでした。

 

食事が始まってから2時間が経過した頃、

「この島では本当は独り客はお断りなのだ」と教えてくれました。

島の人は基本的に親切で疑うことを知らないので、簡単に騙されてしまいます。

船でフラリとやって来て、島のキャンプ場などに居座り、魚を釣って食いつなぐ人も時々いるのだとか。

そしてアチコチのお宅でモノが無くなることが頻発したりするのだそうです。

この宿でも何度か盗難被害に遭ったのだそうです。

こうなると、その人が島に滞在する間はカギをかけないといけない。

島にはカギをかける習慣がなく、高齢者にとってはそれだけでも大変なことなのだとか。

特に、全員が家族同然で平和そのもののこの島に生まれ育った年配者ほど人を疑うことを知らず、

部屋から大金がなくなってしまい、「どう考えてもアイツだ」と周りの人たちが言っても、

「あの人は私の荷物を運んでくれた。あんな親切な人がそんなことするはずがない。

きっと私がボケてどこかに置き忘れたのだ。そのうち出てくるよ」

ということになってしまうのだそうです。

 

ちなみに現在も怪しげな人がキャンプ場に住み着いていて、

カブで移動しているので島の人たちには「カブの人」として知れ渡り、警戒しているのだそうです。

港に着いた時、近くに集まっていたおばあさんたちが一斉にオイラを監視しているように感じたのは、

被害妄想ではなく、きっとオイラの発する怪しい周波数をキャッチして、

「アイツは怪しい…。『カブ』に続いて2人目目か」 とか思っていたのでしょう。

 

以前この宿に年配の男性一人客が宿泊した時のこと、どうも挙動がおかしくて、

駐在さん立ち合いで荷物検査をしたら、ロープ、軍手が出てきて、

問い質すと、「妻に死なれ、嫌になったので死場所を探して来ました」と答えたのだそうです。

「アナタが死んでしまったら、たった1泊でもかかわりをもったワタシだってとても悲しい。

奥さんのお墓の面倒をアナタがみなくてどうするんですか」

駐在さんと2人で諭したのだそうです。

 

というわけで、1人でこの島に来る人のよからぬ事件を何度も経験するうち、

「独り客には何かあるかもしれない」という懸念がつきまとい、他の宿では上手に断っているのだとか。

そして基本的に1人客でも受け入れてくれるのは現在この民宿だけなのだそうです。

今回泊まった3人のうち、1人は他の宿がすべて"満室"だったため最終的にここで予約をし、

もう1人は駐在所でここを紹介されたのだそうです。

「駐在さんはここが1人客受け入れることを知ってるからね」とのことでした。

オイラはネット評を見て、「どんだけ酷い宿だ」とたまたまここを最初に選びました。

オイラが選んだつもりだったのですが、1人客のオイラには最初からここしか選択権がなかったのです。

 

そういえば。

駐在所のお巡りさんはニコニコ親切に宿の行き方を教えてくれたけど、

実は胸中イロイロ思ってたんでしょうね。

そして宿の名前を失念してしまっていたとしても、ここの宿を案内してくれたんでしょうね。

もしかしたらあの時の立番だって、偶然ではなくいつも入港に合わせて警戒しているのかもしれません。

 

最初は、見知らぬ人たちと食事なんてどうなることか。と心配だったのですが、

おばあさんの島での暮らしのことなどお聞きするうちあっという間に時間は過ぎていき…

23:30 おひらき 

おやすみなさい。

 

(続きます)